「ぐ〜ッ♪ぐ〜ッ♪ぐぐっぐ〜ッ♪」
ひんやりとした薄暗い地下通路の中を、緊張感のない鼻歌がこだましていた。
古い石壁に囲まれたこの通路は、カビた匂いと湿気を放っている。
ときおり裾をぬらす水たまりに苛立ち、インキュバス(ラグナス)は服をまくしあげている。
いつのまにこんな通路に入りこんだのか覚えてはいないが、
先頭きって意気揚揚と歩いていく女二人組は、絶対に迷っていることを否定するだろう。
アルルが時々ちらちらと振り向くので、シェゾはうまくこの状況を抜け出せずにいた。
「…ところで、ルル―はどうしてここに来たの?キミにも手紙が来たの?」
ぺちゃくちゃと女二人の会話は絶えなかったが、ようやく的をついた話題に入った。
(そうだそうだ。また秘宝を狙う奴が増えてしまったじゃないかッ)←以下、シェゾ心の声。
「何故って………」
ルル―はふと、昨晩の夕飯のメニューでも聞かれたかのように、視線を宙に泳がせ記憶をたどりだした。
シェゾは内心びくびくしていた。ルル―が秘宝のことをどの程度知っているのか、
気がかりだったからだ。この秘宝が、世界を征服できるだけの力を秘めていることを、
なるべくならば誰にも知られていたくはない。
「たしか……ふふふの金庫……」
「はいぃ!?」
アルルとシェゾの大声が通路内に響いた。
ラグナスは真面目な顔で聞き入っている。
「あの金庫、気になるでしょぅ?」
「なるなるっ!!って、え、何の話を……」
「だから皆で……、ちょっとなんなのよ、その顔!!」
アルルのぽかんとした顔を見て、ルル―は少し逆ギレ気味だ。
「だから、…よく聞きなさい?あの金庫の中身を見てやろうと思って、双方の合意のもとに開いたのよ。そしたら……」
(また無理やり奪い取ってこじあけたりしたんだな!?なーにが合意だ)
「中に紙切れが入ってて、この遺跡までの地図が描いてあったのよ。コレなんだけど……」
(なにぃっ!?では、まさかふふふの奴が……)
がさがさと胸の谷間から折りたたんだ古びた紙をとりだして、ルル―は開いて見せた。
シェゾも思わずのぞきこむと、地図はすっかりルル―の香水に侵されてしまっており、
皆目見当もつかない花々の甘い香りが鼻をついてきた。
(ひどいな、こりゃ)
それは香りだけでなく、地図の稚拙さへの感想でもあった。
「ふふふもコレは知らないっていうのよ。不思議でしょう?だから皆で……」
(ふむ?ということは…??)
「皆って?」
黙って聞いていたラグナスが、ルル―の言葉に口を挟んだ。
それにムッときたのか、
「そんな下々の者達のことなんか覚えてないわよッ」
と、のぞきこもうとするラグナスの目の前で地図をびりびりと破り捨てた。
「あーーーーっ!!」
「うるさいわね!もうこんなの必要ないでしょう!?こんな遺跡ちょろいわよ!」
(この肉体バカ女めーッ)
そう憤怒したのはシェゾ一人だけではあるまい。
しかし今更地図の必要性を認識できる状況下でもない。
「でもやだなぁ、そのヒホウが見付からないと、ボクたちここから出られないんだよね。
まっくらじめじめが好きなシェゾならともかくさぁ〜」
(こらこらこらこら、人をキノコか何かと同一視しやがって……)
「お化け屋敷みたいだし……」
「そうね、そう言われればなんとなく……」
「ぐー……ぐっ?」
「よせよ、二人とも。そんなことを言っ……?」
ラグナスが、周りを見渡し立ち止まってしまった二人に声をかけたとき、
全員は真っ暗い通路の奥に静かな人の気配を見出した。
……しく……しくしく………
つづく
使いたい単語がもう出てこなくて年寄りくさいです、自分。
ギャグセンスはないので、先人方のようにおもしろくできなくて申し訳ないです。次回走者さんヨロシク!
壊れた方向性超希望!(爆) 楽しみですわ〜〜。
神奈川県横浜市 にしのはら さん
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その仕草、なんかいかにもルルーってあたりがいいですね。
何気に会話からみんなの性格が読めてとれるし。
さて、次回の走者は「聖 十夜」さん。よろしくお願いします。
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